彼の哀歌

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納刀したファイと同様に、リオンもその刃を鞘に納めていう。 「力とは手段だ。結果ではない。何かを守れるか否か。その結果だけが、すべてを支配している」 「そんな事は貴方に言われなくても分かっているつもりです。俺が聞いているのは、それが、今、この状況とどう関係しているのか、という事です」 「俺はかつて守れなかったものがある。目の前でその命を散らしていったものが幾つもある。その度に俺は復讐に身を委ねてきた。そして、それは今も変わらない。俺は、変われないんだ」 「……リオン様、貴方が見た光景が何なのか、大方想像がつきましたよ」 やれやれと内心で溜息を吐く。この人は何時になっても、成長できないんだろうか。言葉には出さないが毒づいてやる。 言動が子供っぽいと思って居たけれど、やっぱり中身も子供っぽかったんだ。なんて思ってしまう。 それでも、見た光景が一体何だったかを口にしないのは、それに対しての執着が彼自身にないからなのか。それともそれを耳にするのが恐ろしいのかは、わからない。 「それでも、そんな理由で暴れ回るなら。俺は目標を諦めてでも、貴方を止めてみせる」 「ほざけ。俺を止めるだけの力もないくせに」 互いの周囲から炎が揺らぐ。ファイにリオンを圧倒できるだけの技術などない。 だったら、一発勝負に限る。だとするのなら、自身が持てる最強の技をつかわなければならないだろう。 リオンも、時間をかける気などそうないだろうから大きな技で削りに来るはず。だったら、もうそれに賭ける他ないだろう。
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