彼の哀歌

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リンと空気が張り詰める。 燃え盛る火焔の音が遠くなる。真っ赤な揺らめきが涼しさを感じさせる程に集中する。 リオンに対抗できる可能性をもった唯一無二の技。 それは、声も知らない母の技。 それを解き放つ。 「美しきこと火鳥風月!」 「組曲四季」 二つの技がぶつかり合い、そして勝利したのは……。 「予想外だったよ。おまえがこれだけの実力を持っていたなんてな」 悲しきかな、リオンだった。当然の帰結と言えばそうなのかもしれないが。 二人のぶつかった所は、最早原形をとどめていない。 炎など、とうに掻き消えて、あたりには煙がくすぶっている。あたかも、ファイという炎がリオンという水によって消されたかのようだった。 いや、むしろ―― 「まぁ、今回はお前に免じてあいつは殺さないでおこうじゃないか」 尤も、二度目はないけどな。 なんて、どこか楽しげな、さみしげな声で呟いて、ナイフを呼び出し投擲。 それは敵チームリーダーのブローチを確実に破壊した。 勝利者を告げるブザーが鳴り響き、リオンは気を失っているカレナを連れて会場を後にする。 残る沈黙は、一体何を意味しているのだろうか。 たったの一人も声を発することが出来ないまま、リオンの姿を目で追うだけだった。 ――――――――― 「炎姫、か」 一人呟いた。 かつての功績にその心を躍らせた女性の刀。 たった一人の息子を護り、その命を散らした女性。その形見。 「どうして」 呟き、嘆き、苦しみ。 憧れが、目の前にあるのは。
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