歌劇

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何れにせよ、だ。相手のチームリーダーは委員長だ。 例え、リオンが不意を突かれブローチを砕かれるような相手であっても、それよりも先に相手を倒してしまえばいいだけの話。それだけの、たったそれだけの簡単な話なんだ。 何も恐れる事は、ない。相手があのスクルドである訳でもなければ、自分の父親でも、ましてやリオンですらないのだから。 開始の位置まで向かうと、完全に広がる景色に息をのむ。広がる草原の向こうには、すでに陽炎が揺らめいでいるのだから。試合開始前の魔法の使用は禁止されていた筈。 もはや口に出すまでもなく、暗黙のルールとしてそれはあると言って良い。 だとしたら、あの陽炎は、とファイの脳裏が恐怖に飲み込まれそうになる。 「臆するなって言っただろう? 大丈夫だ、ただの、こけおどし」 「ですが、あれは……」 「あれはただの流れ出た魔力。熱を帯びた火の魔力だ。ああやって、相手を脅していたんだろうよ」 全く、相変わらずの野性味あふれるテイストでおじさん感動しちゃうね、と。 リオンは何の気なしに言った。それが、普通の人間にはどれだけ恐ろしいことなのかもわかりもせず。 「さて、お前は鬱陶しい委員長の相手をしていてくれよ?」 開始のゴングが鳴ると同時に、身を焦がすかのような熱が全身につき刺さってきた。真夏の太陽なんて目じゃない。 「あっつあっつ!」 咄嗟に魔法で熱エネルギーを吸収する。それが出来る技だったからまだいいだろうし、相手も小手調べ程度にしか思っていなかったのだろう。 「だから、俺に通用するわけないのになー」 なんてつぶやいて、リオンは勝手に先陣を突っ切っていった。
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