歌劇

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こんな、感情を露わにして相手に切りかかるなんて言うことは見せたことがなかったはずなのに。 今は、こうして殺意を剥き出しにし、小手先の技を使い、確実に相手を殺そうとしている。 災厄の魔杖、レーヴァテインがリオンの眼前に迫る。収束された炎の刃は、陽炎を軌跡に残す。 眉間にしわを寄せて、左手に持っていた納刀されたままの紅蓮でそれを受け止める。しかし、実体を持たないそれは一瞬だけかき消されただけだった。その一瞬で、刀身はリオンの眼前を通り過ぎ、彼女は再び距離をとる。 彼がすでに刀の鯉口を切っていた事に気が付いていたのだ。 クルドがあのままもう一度、切り掛かっていたら今度はカウンターで致命傷を負っていた事だろう。 前髪がチリチリと焼け、なんとも言い難い醜悪な匂いが鼻をつく。 まるで、人が焼かれるときの匂いに似ている、なんて思いながらリオンはぬかるみから脱出する。 「ガァァッ!」轟、今度は距離をとったまま、彼女は振るう。 「これだから嫌いなんだよ」 なんて零しながら、彼は跳躍して回避を試みる。自分が一度、息子の屋敷を同じもので叩き切りかけたことなんて、もう覚えてもいないことだろう。 そして、その眼前には魔法が迫っている。 「ぶべらっ」 顔面にそれを思い切り食らったリオンは思わずのけぞる。 明確に見せた隙だった。が、彼女は切り込まない。地面に落ちるのを待っていた。 くるり、宙で一回転すると、「あーあ。前髪完全に焦げちゃったよー」なんて言いながら髪を触る。 「で、やっぱりそれでも冷静なわけね」 「当たり前……お前がそのくらいでたじろぐわけがない」 「こりゃまた、やりにくいことで」
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