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「こうなったらせめて連れて帰るだけでも!」
ファイは一人そう言うと、すぐさま走り出す。
ただ、リオンの襟をつかんだままで走っているので、当然彼の首が締まる締まる。
「グェッ! ちょっ……ファ、あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ」
その上に、二人ともそう大差ない身長なので、リオンの事を引き摺って行くしか無い。
そもそも、ファイに持ち上げる気なんて更々ない。
不死者である彼にいちいち遠慮をしている事は無いのだ。
骨を折ろうが、頭をぶち抜かれようが、死ぬわけがない。
「誰かたすけてぇぇぇぇっっ!」
リオンの悲鳴が木霊する昼下がり、灼熱の太陽が学園に降り注いでいた。
これが彼らの日常である。
今日も彼らは笑い怒り、そして日々を過ごして行くのだろう。
残暑の日差しの下、燃える木々の紅を目にし、命が輝く季節を彼らは走る。
二度と戻らない時間をその足で踏みしめながら。
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