歌劇

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「おいおい、そいつを取り出すってことは随分と本気出してくれているって解釈でいいのかな?」 冷や汗を額に滲ませながらそう尋ねた。彼女が使った魔法が、それほどまでに醜悪で、酷く冒涜的な何かをしていたのだ。 ずるり――そんな音が聞こえてきそうな動きで、それはリオンに迫る。 刀身を引き抜き、それを受け止める。柔軟に動くそれは、しかして鋼鉄に似た強度で弾き飛ばす。舌打ち一つ空中で体制を整え、納刀した。 十分すぎる意思表示だった。これ以上ない意思表示の一つだったと言える。 「雪月花、初雪」 その技の名前を呟くと、彼の周囲が白く映る。 「なぜ、ナゼ、何故!」感情を露わにして、クルドは叫ぶ。「どうして、貴方みたいな人がその技を使えるの!」 「使えるんだよ」一言だけそうつぶやいた彼は、その顔から余裕が消えていた。 「燐禍!」彼女は手に持つそれを、地面に叩きつける。するとどうだろうか! それは先端が枝分かれをして、それぞれが独立した動きを行い始めた。 間違いなく彼女が使っているそれは無機物のはずだ。しかしそれはそれぞれが意志をもって動いているかのようにしか見えない。 憎悪、まるでそれがそのまま、形になったかのようなおぞましさとともに、リオンへ向けて襲い掛かる。 流石だよ、つぶやくとリオンは鯉口を切った。 「雪月花、初月」 醜く、汚らしく、這いずり回りながら、迫りくる何かは彼の周りでその動きを止めた。 「雪月花、開花」 抜刀、刀身は静かに光り輝く。白く、弱々しく、しかし力強く。周囲に迫る、醜悪なそれに向けて、刀を一振りした。
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