歌劇

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「……私は、ファイにも負けたのね」 医務室のベッドで目を覚ました委員長はつぶやいた。 何故勝てないのか、彼の実力は間違いなく、自分と同格に近かったはずだ。いくら彼が優秀な人間とは言っても、実戦で負ける気などなかった。 父親が先の大戦で戦果を挙げた英雄だったとしても負ける理由は存在しない。相手は、自分と同じ学生で、特別であるという理由は何処にもなかったのだから。 体を起き上がらせる。体がきしむように痛い。やはり無理をしすぎたのだろうか。 最後に見えた、あの瞳が頭の中から離れない。 最後に見えたあの目はリオンの中に見えた目だ。似ている、いや、似てきたのだろうか。 ベッドから抜け出して、周りを見回すと、そこにいたのはクルドだ。 彼女も結局、リオンに敗北した。彼女の実力はリオンに匹敵すると思っていたのだ。 クルドの力は明らかに一学生を凌駕しているものに違いない。少なくとも、生徒会長よりも強いに違いない。 それでも敗北したのだ。わからない。彼の力の奥底にあるもの。 多彩な武器を使いまわし、豊富な魔法の知識で戦術を組み合わせ、相手の思惑を全て打ち砕く。 天から降り注ぐように神々しく、地の底より湧き出でるものよりもおぞましく、彼はその力を行使する。 恐ろしい。その実力を知っていた彼女たちでも、その力の底知れなさに恐怖したというのに、他の生徒たちは猶更恐ろしいだろう。
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