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底知れない何かは感じていた。委員長にとっては、夏休みの一件。クルドにとってはレストランでの一件と、ベルダンディーが来た時の一件。
答えに結びつかない、ただの点と点。それがあの瞬間につながり切った瞬間だった。
決勝トーナメント一回戦の時の、嬉々として爛々と輝くあの瞳。解放感にあふれた表情、それでいて奥底からあふれ出る後ろ暗い雰囲気。それは彼の片方の背から広がる、一切穢れのない白い翼と相反しているようで、歪だった。
きっと、勝てないと思っていた。自分自身では勝てないと。それがわかっていたからと言って、黙っていることも出来なかった。
「悔しい……」
そんな言葉が口から漏れ出した。
今まで自分よりも弱く、自らが庇護するべき対象だと思っていた人間だったのに。何も出来ない奴だと思っていたのに。
追いつけない、何かが決定的に違う。そんなことは分かっていた。でも、それでも、その正体くらいは分かったっていいじゃないか。
崩天のルシフェルの弟子、それが正体ではない。それだけは確信がある。でも証拠がない。
だから、どうしたというのだ。その正体を知った所で自分に一体何の利益があるというのだろう? 只、知的好奇心を満たしたいというだけか?
今まで疑問にも思ってこなかった事を胸にする。
――ああ、そうか。
委員長はここで初めて、自覚したのだ。
自分の想いに。
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