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予想はしていなかった。画面を眺めながら、少女はほくそ笑む。
全力で挑むつもりなんてなかった。生徒会、という職柄実力者がそろうと言う事は事実であり、歴代の生徒会も一部を除いて全力での競技参加は見送る傾向があった。
あくまでも、一種の展示という形ででしか参加をしなかった。
しかし、今回は餌が大きかった。何かの企みがあるに違いない、と言う事は聡明な彼女にはすでに分かり切っていた事だ。
その内容に関しても、大方察しはついていた。
大きな問題が起きなければいい、とその瞬間までは思っていた。
だが、あの時の言葉。その言葉に心が躍る。憧れの存在との手合わせ、それが出来るといったそれに、彼女の思考は狂う。
生徒会として、運営を援助する立場から一人の挑戦者としての立場として、自らの心が動いた。
そして最後に彼女の心を不動のものにする瞬間が、そこにあった。
片翼の天使の姿を見たとき、心が躍った。
それが目の前にあるのだ。憧れに近い存在が、間近にいたのだ。
リオンという存在には、目をかけていた。ここ最近あるトラブルの中心となる人物には、彼と、ファイが常にいた。
初めはファイが、暴風の魔人の息子であるからこそであるとばかり思っていたのだが、そうではなかったのだ。
「大きな思い間違いをしていたのだ。私たちは」
ミスディレクション、というほどでもない。大きなものに隠れた些細な行動が、彼の行動を覆い隠していたのだ。
決死、の覚悟をもって挑まなくてはならない。
だとするのなら――
「私は、命を捨てる覚悟を持たなくてはならない」
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