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――弱さを受け入れることが出来なかった。
何故強さを求めたのか、と尋ねられたらこう答えるだろう。
自分自身の弱さを受け入れる事が出来なかった。
ただそれだけなのだ。強くなろうとしたのは。
自分が弱かった所為で、大怪我を負わせてしまった。もしとか、そんな話を今更した所でどうしようもない事なんてわかっている。
大切なのはこれからだ、だからと言ってあの時の事を思い出さずに居られるわけもない。
強くなった。傍らにいられるほどに強くなったつもりだ。
周囲は自分を天才だとかいう。そんなことは思ったことはない。
只、人よりも努力をしてきた、ただそれだけなのに。
事実として、もう追いつかれてしまった。幾ら、師事している人間が人よりも格上の存在だとしても、その成長の度合いは明らかに度を超している。
何年もかけて自分が築き上げてきたものを、たった数ヶ月でもう追いつかれたんだ。
まったく……嫌になってしまう。私が強くなって、今度は守られるんじゃなくて、一緒に戦う。
その為だけに頑張ってきたのに。
挫けそうになる。嫌になる。今まで頑張ってきたのは本当に何だったのか。
まだあきらめない。強くなる。もっともっと強くなる。
私はあの時からずっと、今も変わらず、これからもずっと。
彼の事が好きなんだ。
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