終幕

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周囲に溢れる人の群れ。 何もない、只広い舞台の上に立つ、十人の少年少女。 決勝、その高みに登りつめた選手を、この場を持って再び紹介するための時間だ。 実況が何かを喋っている。その興奮を解放した上擦った、悲鳴にも似た叫び声で。その隣で静かに語る声も、何処か忙しない。 それほどまでに異例なのだ。 この対決は。 生徒会メンバーと、一年生の対決。 エキシビション等ではない。偶然の産物で勝ち上がった訳でもない。 純然たる実力、それだけで彼らはこの場所に立っている。異様な状況に会場は熱気だっている。 「今日、この場所に立っていることを光栄に思うよ」 熱く震える言葉。 ゴングが鳴り響く。漂った熱気が、闘気が、魔力がぐるりと渦を巻き、ぶつかり合う。両チームが武器を構える。 そして、走り出し、互いの武器と魔法が――。 「茶番はここまでだ」 ぶつからなかった。 空から降りてきた一人の男。暗い闇色のローブを身に纏い、フードで顔を隠している。しかし、何者なのか、誰の使いか、などと論じるのは愚問に等しい。 背中に携えた一対の翼。それこそが彼が何者であるかを暗に証明している様なものだ。 「今日この時をもって!」張り裂けんばかりの声で、男は宣言する。「私たち天使教は、この国に宣戦布告をする!」 理解が静まり返る場内。好都合と言わんばかりに男は続ける。 「私は、崩天のルシフェルの、正当なる後継者である! 我らの決起の証として、手始めに諸君らを我が主に供物として捧げよう。恐れるな! これは――」 言い切る前に、魔法による攻撃が、男を襲う。放ったのは誰でもないファイだ。 「ふざけるな! あの人は……、お前のようなことは、しない!」 刀を抜き放ち怒りのままに突撃するファイ。しかし、その刀は男の手前で止まる。 魔力障壁だ。こんな芸当が出来る人間は弱いわけがない。 「ふむ、身の程知らずが。あのお方から賜ったこの私に傷をつけようなどとは」 魔力を高め、手の平をファイの腹部へと向け、魔法を放つ。しかし、それが彼を貫く事はなかった。 「何、勝手に盛り上がっちゃってくれてんですかねぇ。当事者抜きで」 リオンが魔法を防ぎ、ファイを引きはがしたのだ。 「落ち着け、ファイ。口だけとはいえ、崩天の名を口に出して、ここに殴りこんできた奴だ。実力はそれなりにある筈だ」 「へぇ、貴様は少しは出来るようだな。学生連中とは、大違いだ」 「俺が貴様のような贋作の使いっ走り風情に後れを取るとでも? 冗談ならその薄っぺらい羽根だけにしておいてくれない? あと、こっちも暇じゃないから、さ。羽毟り取られて、神様に命乞いする前に帰った方が良いぞ」 ニヘラと笑いながら、リオンは言った。生徒会長に目配せをして置く。すでに観客の避難誘導は始まっているようだ。 生徒会長は首を縦に振り、仲間たちを誘導してその場を後にしようとする。彼らは生徒会として避難誘導の援助をしなければならない。 「誰が逃がすと言った」男は壁を発生させて、彼女たちの足を止める。
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