二学期の授業風景

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リオンの弟子たる、ファイも一応技を覚えているのだが、流石にまだまだ物まねの段階を超えない。 まあ、覚えていると言っても序曲だけだが。 そもそも、リオンの技が魔法との併用によって初めて可能になるような物ばかりなので、火と風の魔法しか使えないファイには難しい問題だ。 特に幻想即興曲は。 「あんたも、同じ技が使えるのかしら?」 「一つだけな。たった一つだけ。リオン様と同じ技が使える」 ふと思いついた風にカレナが尋ねると、ファイは口を尖らせて言う。 何せ、自分にも使用可能な技がある事くらいは知っていたが、それを使用するには余りに実力不足である事を、自覚しているのだ。 セレナーデやマーチなども、ファイには使う事が可能であるのだが、それを使っても必殺には一切ならない上に、隙ばかり生み出してしまう。 全く、格好付けるくらいの実力は欲しいものだ。 ファイは常々そう思うのである。 「ひとつだけ、ね。それってどんなの?」 興味津々にカレナは身をよせて尋ねてくる。 「……オーバーチュア」 「オーバーチュアってたしか……序曲よね」 「悪いかよ。まだ、基本の事しか出来ないんだよ」 顔をそむけて、ファイはそう吐き捨てた。 実はかなり気にしているのだ。 別の技もいい加減覚えたい所である。 「まぁ、いいじゃない別に」
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