二学期の授業風景

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クルドは剣を構えて、リオンと対峙する。 その姿からは闘気が滲んでいる。 凛とした佇まいからは戦慣れした雰囲気が滲んでいる。 全く隙が無いのだ。 それに、見ていて美しい。 まるで、本当に女神を見ているかのような錯覚に陥る。 女神ならすぐ傍で、この試合を観戦しているが。黒猫の姿で。 「やれやれ、気乗りはしないが、お前さんがその心算なら受けない訳にもいかないだろう」 リオンはそう言って、自然な態勢で槍を構えた。 その鋭い切っ先は末の女神の喉元を、微細な動きもせずにとらえたまま動かない。 一瞬、リオンの姿がぶれたかと思うと次の瞬間には金属音が一つだけ、甲高く響いていた。 真っ直ぐに突き出された槍はクルドの剣に阻まれていた。 「やられたね。まさかこの一撃を防がれるとは」 さして驚いた風も無いように、リオンは歪な形をしている剣で防いだ女性を見て言う。 今の動きはファイには勿論、カレナにすら見えなかった。 腐ってもギルドランクA。 その眼には自信がある。 そうしてもう一度想う。 自分の目指している処が、どれ程高く遠い場所であるかを。 「即興曲をこうもあっさり防がれちゃあな」 「……五月蝿いわ」 静かに彼女は言うと、そのままリオンを弾き飛ばす。 「うおっ……危ないな」 それでいて、余裕の表情。 「フランベルジュは当たったら怖いからなぁ……」 苦笑交じりにリオンは言う。 フランベルジュ。刀身がうねうねと歪に波打っている剣である。 その奇怪な見た目とは裏腹に、切れ味が良く、中々に驚異的な武器である。 加えて彼女の属性は火。 スクルド、という名を与えられる前には、氷炎と呼ばれていた時期があった。 それの意味は、決してリオンやキリエが使った、火属性の応用魔法が使えるからでは無い。因みに、彼女はその魔法を使う事は出来ない。
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