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絶え間ない攻撃の嵐の中、一瞬、ほんの一瞬だけある隙を見つけて、彼女は踏み込み、波打つ剣を横薙ぎに振るう。
かろうじて、反応する事が出来たリオンはバックステップで何とか回避する。
が、それでも完全に回避し切れた訳では無い。
そもそも、マーチそのものが防御など考えていない技である。
前方の敵をすべて薙ぎ払い、突き進む。
それがマーチ、行進曲の真髄。
だからこそ、相手に反撃のすきを与える訳にはいかない。
与えてはいけなかったのだ。
普通ならリオンの攻撃力に圧倒され、回避若しくは防御しか出来ない。
第三者の介入でもない限りは回避不可能な攻撃を、彼女はたった一人で抜いた。
「どんだけ能力がチートなんだよ。これに反撃する奴なんて初めてだ」
「それは光栄ね」
バックステップで回避したリオンに、追撃をかける。
その一撃を見切り、槍の長い柄で防御をする。
だが、そのまま鍔迫り合いなどする気も無い。
早々に剣を引き、次の一撃を与える。
次の一撃は突き。だがそれを回避して、リオンは槍を振るう。
槍のリーチの長さは剣の比では無い。
だが、リオンが振るうと同時にクルドは腰をかがめて回避した。
そして、大きく振った直後のリオンの首へ剣を突き付ける。
「これで、終わりね」
最後まで表情一つ変えることなく、クルドは崩天のルシフェルに勝ってしまった。
如何に力を抑えていたと言っても、あのレベルを圧倒するのは難しい。
「順当だな」決着のついた二人を見てファイは呟く。
流石にスクルドである事が判明している彼女に、一介の学生が勝つなんてありえない。
もし、勝ってしまったら、その時は……。
本気でお仕置きをしないといけないだろう。
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