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まさか彼女がその事を話すとは思っていなかったのだろう。
「……彼だけが使える特別な無属性魔法。それは、恐らく魔法を無効化する魔法の事だと思う」
魔法を無効化する魔法?
弟子二人を除いて、そうオウム返しに言ってしまう。
魔法を、無効化する魔法なんて、矛盾も良い所だ。
「同じ魔法で相殺するんじゃないのか?」
ワルキがクルドにそう質問をする。
「違うわ。魔法が何か見えない壁のようなものにぶつかった瞬間に消え去った」
「壁にぶつかった瞬間?」
「ええ、大仰な詠唱をした様子も無かったわ。それに、同じ魔法を使った風にも見えなかった」
「……それが特別な、無属性魔法……」
なんだ、特に大した事は無いじゃないかとカレナはその時思った。
だが、次の言葉を聞いて、同じ事を考える事なんて出来る訳も無かった。
「……十発以上の上級魔法を無効化するなんて、彼にしか出来ないわ」
上級魔法を十発!
目を見開いて驚く。
そもそも、魔法は初級から始まり、低級、中級、上級、絶対級へと階級を上げて行く。
当然、同級に区分されている魔法でも、威力は違うのだが。
そんな事はともかく、上級魔法と言えば威力は元より、形状なども複雑で、使用するためには詠唱を必要とする物が大半だ。
当然、初級などとは比べるまでも無い。
まさしく風の前の塵。
初級魔法ですら人を殺せると言うのに。
「それは、本当なの?」
一言、一言を噛み締める様にクルドに確認する。
「間違いない。私はこの眼で見たから」
もし、彼女の言う事が本当ならなんと恐ろしい事だ。
絶対級ですら無効化させてしまうのでは無いのか。
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