面倒臭いだけのひと。

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リオンの言った通り、彼がいなくなった瞬間に不可視の魔法は解除された。 「……本当に、一体何者……?」 歯痒そうな表情をして、彼女はリオンが消えた虚空を眺める。 周囲では幾人もの生徒達が、汗を流している。 その中にあって、ファイ達だけは異端だ。 「ファイ、本当にリオンは一体何者なんだよ」 溜息を吐きながら、厄介事を残して去っていった師匠を恨んでいるファイに、ワルキは尋ねる。 「俺の兄弟子だよ。それ以上は知らないさ。何処で何をしていたかなんて」 実際はその通りである。 リオン・ヒルタレンという名前と、どんな人物か以外の設定をファイは知らないのだから。 まさか、十五年前の英雄ですなんて言える筈がない。 というか、一体何歳だよ、という話だ。 まさか十代前半で、五十万の敵兵を殺した訳でも無い。 実年齢……通常、学校に通っている人物の年齢のままであれば、一歳の時の話である。 ……流石にありえない話だ。 一応、リオンは十五歳だ。 いや、数えて十六になるだろうか。 実際の年齢は五百幾歳であるが。 「お前でも知らないのかよ」 「そりゃ知らないさ。あまり他人の過去に関わるものでもないしさ」 「まぁ、それもそうだが……気になる所ではある」 「それもそうか。まぁ、多分――」 「何処かの孤児だったと思えるわ」 ワルキとファイの会話に、唐突に口をはさむクルド。 「……クルドさん、貴方も同じだったからそう思うんですか?」 ピアナがクルドに尋ねる。 彼女がクルドにそう質問したのは、他でもない。 女の勘というやつだ。 自分も一時期、似たような境遇にいた為でもあるのだが。 「貴方が強い理由は、学校に通う事も無く、ただ日々を生き延びるためだけに、あらゆることをしていたからでは?」 尋ねられると、クルドは答えたくないと言う風に、顔をそむける。
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