面倒臭いだけのひと。

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一学期の悪夢の被害者に、誰もなりたいとは思わないだろう。 当然、ファイ達も。 一斉に集まる。 そこにはリオンの姿も。 流石に二度と、折檻は受けたくないのだろうなと、ファイは関心する。 馬鹿でも一応、成長はするのだと。 「今日はここまで、二学期は校内戦術大会もある。各自鍛錬を怠らない様に、以上解散!」 担任の号令と共に、チャイムが小気味よく鳴り響く。 生徒達は一斉に礼をして、思い思いに散っていく。 と言っても、次の授業がある為、教室に帰って行くほかはないのだが。 リオンはその一瞬の後には消えていた。 早い、早すぎる。 幾らなんでも逃げるのが早すぎる。 彼の逃走速度は、風を超えているらしい。 ファイは舌打ちをして苦々しげな表情をする。「逃したか……!」 そう呟くと周囲を見回す。どうせ、次の授業には出ないつもりだろう。 疲れただ、なんだと言い訳をするかもしれないが、あの程度――ファイ達からすれば天上の争いだが――の戦闘で、彼が疲労する訳も無い。 所詮、それは授業を抜け出す為の詭弁でしか無い。 そもそも、暗殺が主戦術だなんて彼は聞いた事も無かった。 リオンの戦術は、暗殺などとはかけ離れた場所にあるものだとばかり思っていた……と言うより、暗殺などする筈のない性格だと思っていたのだ。 どちらかと言えば、完全な力押し。 圧倒的な力で、敵を捩じ伏せる事を念頭に置いて戦っているとしか思えなかった。 それに、リオン程の実力なら別に暗殺をする必要性などどこにもない筈なのだが。 どうせ、負けを演出した腹いせだろう。 案外、幼い一面も持ち合わせているようだ。
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