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その程度は覚悟していた心算なのだが。
彼女が自分の方を簡単に振り向かないなんて事くらいは。
そもそも、彼女は恋愛ごとを避けている節がある。
その辺りはリオンに似ていると言った風だろうか。
二人の境遇は限りなく近いが、その過程で大きな違いがある。
信じられるものを見つける事が出来たかどうか、たった一つほんの些細だが大きな違いが。
「リオン様に少しばかり似ているか……」
「リオン? リオンがどうかしたのか?」
何気にファイが呟いた一言にワルキは反応した。
「いや、なんとなく思っただけだ」
「リオンとピアナが似ている? そんな訳無いだろ」
「だな。似ている訳がないさ」
我ながら馬鹿な考えだと自嘲しながらファイは歩いて行く。
確かにあの二人じゃ似ても似つかない事だろう。
「まぁ、恋ばなはこのあたりで終わらせといて……」
「……おいおい。女子かよ」
コイバナなんて言葉を使ったワルキに、ファイはあきれながらそう言う。
「いや、男子でも普通に使うだろ」
「しらねぇよ。そんなこと」
そもそも、そんな事に興味が無い。
わざわざ、そんな下らない話をするなんてどうかしている。
最初聞いた時は鯉の鼻っつらの事だと思ったのだが。若しくは恋の花とか言うメルヘンチックなものだと思ったのだ。
「まぁ、ともかく」
ワルキはワルキで、俗世離れしているファイに驚きながらも話しを振る。
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