面倒臭いだけのひと。

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当時から他の生徒達からは、頭一つ分以上抜きん出ていた彼女には、もっと別の事を学びたかったのだろう。 それが戦略と、心理学だった。いや、それしか無かった、と言うべきだろうか。 誰かを護る力と、誰かを支える力。 その二つが、彼女には魅力的に見えたのかもしれない。 ファイを殺しかけてしまったと思っている彼女だ。 護る力と言うのは、欲しくてしょうがないものだったに違いない。 尤も、ファイはカレナを怖がらせてしまったと、もっと普通の道を歩む事にしたのだが。 「俺からしたら、少しほっとしていたんだが」 当時の事を振り返ってファイはそう言う。 彼女が強さを求め無くなったものだとその時は安心したものだった。 まぁ、結果は今の通りだが。 「まぁ、その気持ちはわからんでも無いがね」 そりゃ、好きな相手を危険な目には遭わせたくないのが、男の心情と言うものだろう。 だからこそ、ファイも一線から引いたのだから。 そうじゃ無かったら、今頃もっと実力を上げているに決まっている。 「まぁ、めでたくこの学校で一緒にまた通う事になったのだが」 「さぞ驚いた事だろうな」 苦笑交じりにワルキは言う。 「当たり前だ。全く、普通のお嬢様に戻ってくれたと思っていたら、ギルドランクAになって戻って来ていたんだからな」 「まぁ、昨日まではしゃぎまわっていたお転婆が、翌日にはおしとやかなお嬢様に変わっていたら、びっくりしてひっくり返るぜ」 「まぁ、そりゃそうだけどな。中々複雑だぞ」 「はっはっは。お前も俺と同じ気持ちを味わっていたのか」 大口を開いて可笑しそうにワルキは笑う。 心底、愉快なのだろう。 全く、こいつらは普段からこんなものを味わっているのかと思うと、羨ましくてしょうがない。 本当に他人の、恋愛事での不幸と言うのは面白いものだ。
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