面倒臭いだけのひと。

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「笑い事じゃないんだぞ」 口を尖らせてファイは言う。 「いやいや、悪い悪い……ヒヒヒ」 腹を抱えて愉快そうに笑うそいつが、ファイはひどく憎たらしく見えた。 「そう言えば、平和一番主義のお前が、戦いを教わっているんだ?」 目尻に浮かんだ涙を拭き取りながら、ワルキは尋ねた。 まぁ、ワルキからしたら、ファイは優秀ではあるが、あまり上を目指さない人物だ。 謙虚と言えば聞こえはいいかもしれないが、余り自分の能力を大きく評価しないのがファイの悪い癖だ。 それに、知りあった当初は強さに拘らないのが、よく分かった。 「いや、それは……」 途端に口ごもるファイ。心なしか、頬も赤くなっているように見える。 「……別になんでも無いよ」 顔をそむけてそう言った彼を訝しみ、そして意地悪げな笑みを浮かべた。 「んー? どうして言いたくないのかな?」 「…………」 答えるのを拒絶するようにファイは、顔を背けたままだ。 鼻を鳴らしながら、じろじろと顔を覗き込もうとするワルキに耐えられなくってとうとうファイは口を開いてしまった。 「――たからだよ……」 虫の羽音のように小さな声だった。 足音と、周りの生徒達の声で消え行ってしまうほどに、小さかった。 「なんだってぇ?」 眉をしかめて耳を向けるワルキ。意地悪をしているつもりはない。 本当に聞こえなかったのだ。 「気付いたんだよ! 好きな事に!」
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