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やけくそになった風に、ファイはワルキの耳に向けて叫ぶ。
彼の顔はもう、耳まで真っ赤だ。
羞恥で死ねるような気もしてきた。
動悸が激しく、肩で息をしている。
対するワルキは、耳元で叫ばれた所為で頭に直接響いて痛い。
「そんな大声ださねぇでも聞こえるよ!」
耳鳴りがするワルキは、耳を押さえながら怒鳴りつける。
「知るかっ! ああったく! 恥ずかしさで死ねそうだ!」
顔を未だに真っ赤にしたままのファイは、髪をかきむしりながらヒステリックに言う。
余程恥ずかしかったのだろう。
全く、まだ純情な少年のままだ。
「まぁ、今更気がついても遅かったんだろうけどな」
ワルキが未だ悶えているファイに向かってそう言った。
「うるせぇ。お前も似たような状況の癖に!」
負け惜しみに吐き捨てる。
「な! 心外だな俺は未だ間に合うぞ!」
「嘘つけ、手遅れになりかけているってのに」
「うっさい、こっからが本番なんだ!」
全くもって不毛な言い合いをしながら二人は歩いて行く。
この時の二人は知る由も無かっただろう。
ファイのやけくそに放った一言が、とてつもない誤解を産んでしまっているという事に。
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