面倒臭いだけのひと。

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溜息混じりにそう呟くと、食事を再開する。 どうせ、下らない事だろう。 全くいつもながら本当にどうでもいい事に、首をつっこみたがる。 面倒臭がりの癖に、何かとちょっかいを出しては、状況をめちゃくちゃにする。 少しは大人しくしていて欲しいものだ。 もくもく、と少年は一人静かに料理を口に運ぶ。 ようやく半分ほど食べ終えた時、扉がけたたましく叩かれる。 どん、どん、どんと力一杯叩かれるものだから、扉が壊れてしまわないか心配になる程に。 「開けなさい! いるのは分かっているのよ! ファイ・クロノ・デルシオン!」 どうやら扉を叩いているのは、カレナのようだ。 ……半分、予想していた事ではあるが。 居留守を使いたい気分ではあったのだが、この様子では本当に扉を破壊されかねないので、出るしか無い。 扉が破壊されたら直すのは個人なのだ。修理には時間も金もかかる。業者に依頼するのだから当然だ。 それを考えたら今出た方が良い。欲しいものだってあるんだから。 「はいはい……分かったから叩くの止め……」 「アクアスプレッド!」 「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 カレナの魔法により、扉ごと吹き飛ばされるファイ。 見事なまでに扉は破壊され、彼の背後にあったテーブルに激突する。 料理はみごとに散らばって、茶碗を頭からかぶってしまう。 強かに背中を打った所為か、空気が肺から押し出される。 一撃、たったの一撃でファイは瀕死の状態に追い詰められてしまったのだ。
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