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「あんね、菊ちゃん」
「──はい、なんでしょう」
「私…菊ちゃんにお礼を言いに来たん」
「…お礼……ですか?」
「うん」
何の事か思い至らず私が眉根を寄せると、少女は静かに俯いて
…言った。
「………赤紙が来とったん、お兄ちゃんに…」
───召集令状…──
「もし…戦争 終わるんがも少し遅かったら………お兄ちゃんも戦場に連れてかれとった────」
少女の手が
私の袖口をソッと掴み、そして額が触れそうな距離まで近づいて
秘め事を囁くような声で私に言った。
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