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第五章~小サナ家主~
西日もすっかり遠くに沈み、気付けば町の空には、綺麗なmagic hourが彩りを見せていた。
写真や映画の用語で知られ、"magic hour"と呼ばれるこの時間帯は、陽が沈んでいながらも、まだ残っているわずかな光が辺りを柔らかく照らす。日没後の数十分程ではあるが、"わずかながらでありながらも、最も美しい時間帯"とされている。
そしてその美しい時間も、もう間もなく終わりを告げ、夜の暗さが交代をなそうとするその刹那、とある家では、一人の少年の帰りを、二人の少女が待っていた。
「・・・遅いなぁ、ハルカ・・・、」
椅子に座り、時々背後にある窓の外を窺いながら、少しそわそわと、落ち着きのない様子を見せるリナ。
「きっともうすぐ来ますよ。」
と、夕飯の支度をしているのだろう、何かカチャカチャといじりながら、もう一人の少女、アリスが答える。
「"すぐに来る"、って言ってたのに・・・、!」
リナ、膨れっ面。
と、
「、♪」
「あ!」
「、?」
リナが少し膨れながら窓を見ていると、窓の外、門の方から、駆け足で玄関へとやって来る人影が見えた。
その見てくれは、自分がこの家に来る前にも見ていた、いつも見慣れた姿の少年。
「ハルカ!」
「帰って来ましたね。」
外にいるハルカを確認すると、リナが先に席を立ち、部屋を出て、玄関へと向かい出した。
続いてリナの後を追うようにして、アリスが部屋を移動する。
その一方で、やっとこさアリスの家までたどり着き、玄関前で息を切らすハルカ。一先ずここまでたどり着いた事で、とりあえず気持ちと息を落ち着かせていた。
「・・・ふぅ・・・、なんとか完全に暗くなる前には着いたな・・・。ぶっちゃけかなりギリギリだけど・・・、」
息切れながら結果を振り返る。
「リナに何か言われそうだよな・・・、『"直ぐに行く"、つったのに』とか・・・、」
ハルカ、ある意味既に予想的中。
「、まぁ、それはともかく入らねば・・・、ん?」
と、ドアのノブを握りかけて、ふと考える。
はて・・・、この場合何と言って入ればいいのだろう・・・?
"ただいま"は流石にまだ言えたもんじゃないわな・・・さっき一回入っただけだし・・・、
だがしかし、これからしばらく厄介になるわけだし・・・、いずれは自然と言ってしまう状況もあるやもしれん・・・、
じゃもう先駆けて言っちゃ・・・、いや、ソレは礼儀としてはいかんだろな・・・、
ゔーんどうしたものか・・・、
ハルカ、よくわからない悩み事。
ん゙ー・・・、ん?
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