第五章~小サナ家主~

1/26
前へ
/145ページ
次へ

第五章~小サナ家主~

西日もすっかり遠くに沈み、気付けば町の空には、綺麗なmagic hourが彩りを見せていた。 写真や映画の用語で知られ、"magic hour"と呼ばれるこの時間帯は、陽が沈んでいながらも、まだ残っているわずかな光が辺りを柔らかく照らす。日没後の数十分程ではあるが、"わずかながらでありながらも、最も美しい時間帯"とされている。 そしてその美しい時間も、もう間もなく終わりを告げ、夜の暗さが交代をなそうとするその刹那、とある家では、一人の少年の帰りを、二人の少女が待っていた。 「・・・遅いなぁ、ハルカ・・・、」 椅子に座り、時々背後にある窓の外を窺いながら、少しそわそわと、落ち着きのない様子を見せるリナ。 「きっともうすぐ来ますよ。」 と、夕飯の支度をしているのだろう、何かカチャカチャといじりながら、もう一人の少女、アリスが答える。 「"すぐに来る"、って言ってたのに・・・、!」 リナ、膨れっ面。 と、 「、♪」 「あ!」 「、?」 リナが少し膨れながら窓を見ていると、窓の外、門の方から、駆け足で玄関へとやって来る人影が見えた。 その見てくれは、自分がこの家に来る前にも見ていた、いつも見慣れた姿の少年。 「ハルカ!」 「帰って来ましたね。」 外にいるハルカを確認すると、リナが先に席を立ち、部屋を出て、玄関へと向かい出した。 続いてリナの後を追うようにして、アリスが部屋を移動する。 その一方で、やっとこさアリスの家までたどり着き、玄関前で息を切らすハルカ。一先ずここまでたどり着いた事で、とりあえず気持ちと息を落ち着かせていた。 「・・・ふぅ・・・、なんとか完全に暗くなる前には着いたな・・・。ぶっちゃけかなりギリギリだけど・・・、」 息切れながら結果を振り返る。 「リナに何か言われそうだよな・・・、『"直ぐに行く"、つったのに』とか・・・、」 ハルカ、ある意味既に予想的中。 「、まぁ、それはともかく入らねば・・・、ん?」 と、ドアのノブを握りかけて、ふと考える。 はて・・・、この場合何と言って入ればいいのだろう・・・? "ただいま"は流石にまだ言えたもんじゃないわな・・・さっき一回入っただけだし・・・、 だがしかし、これからしばらく厄介になるわけだし・・・、いずれは自然と言ってしまう状況もあるやもしれん・・・、 じゃもう先駆けて言っちゃ・・・、いや、ソレは礼儀としてはいかんだろな・・・、 ゔーんどうしたものか・・・、 ハルカ、よくわからない悩み事。 ん゙ー・・・、ん?
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加