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「ここにある植物、枯木。それら全てに国が莫大な金をかけて作った薬が注入されてる」
「……死素に対抗する術?」
「対抗する術じゃない。飽くまで“対抗できるかもしれない”術だ。飽くまで、な」
---なるほど。
利にかなっちゃあいるが、この村は丸々実験場にされる訳か。
「村の人達の受け入れ先は何処になるんです?この国にそんな場所があるとも思えませんが---」
男は鼻と口で同時に笑い出し、木に背中を当てた。
そして胸元からキセルを取り出し、笑顔で。
「そうさ、この国に村丸々受け入れられる場所なんざ残っちゃいない。なんせ死素から逃れてきた人間共でいっぱいいっぱいだろうからな」
「それじゃあまさか?」
「この村の周りの土にも細工がしてある。効果あんのかは知らんが、もしかしたら死素の侵食を食い止めるか遅めるだけの力はあるんじゃねぇか」
ああ、そう。
腐敗していた。
空が、土が、森が、空気が、人が。
正しい判断なのだろう。
村を犠牲に死素に対抗する術を見つける。そう、正しい判断なのだ。
悔しさが込み上げてきたが、ああ、僕も例外ではなかった。
それを、他人事だと……。
腐敗していた。
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