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つまり。
この村で栽培されている植物全てに死素に対抗できる“可能性”を持った薬物を注入。
あるのは“可能性”であり、“確証”ではない。
命を腐らせる死素は大体研究する事すら難しく、今まで対抗策の発見など成し遂げられなかった事だ。
実験の成功など可能性は低いだろう。
そして重要なのが、実験の成功失敗に限らず、保証も何も無いと言う事。
村人達が逃げおおせる場所は、この国には無い。
つまり実験の失敗は村人達自らの死に直結する。
そんな人々の上に居て、命令するのが国。逆らえば躍起になったこの御時世。
それもまた、滅びの道へと繋がる。
村人達は不本意ながらも、命をかけて植物を栽培していた。
短い命となり得るのに。
自らの行為が、高確率で死を招くと言うのに。
死素とはよく言ったものだ。
ここまで疎ましく、分かり易い名前は他に無い。
誰が名付けたのやら、さぞ憎しみを込めて付けたんだろうな。
皮肉にも死を招く行為に一生懸命とは、惜しむらくはその表情だった。
ここの村人程生き生きとした、笑顔に満ちた者達は見た事が無い。
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