6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
そしてもう一つ。
この世界に太陽の光は無い。
いや、“無くなった”と言うべきか。
僕が生まれた時には既にそれは失われていて、時計は24時間指針ではなく、48時間に変わっていた。
日夜暗がりの世界で、昼と夜を分かりやすくする為だろう。
空は常に黒く、蒼い空なんて見た事が無い。
光合成が必要な植物にとってここは正に死の世界だった。
死素に感染しなければ枯れて死んでゆく。そして感染を防ぐ為、人間達には伐採されていく。
生きるも死ぬも、本来の形を保つ事はできない。
世界は腐敗し、枯れていく。
そんな中悠長に殺し合いをするんだから平和なモンだ。
僕は既に意味を成さない天窓を見上げた。
男もそれに合わせて暗い空を仰ぐ。
「僕は、今のままだって良いのに。故郷で、ゆっくり、幸せに最期を生きたかったよ」
「世紀末って奴かね。どうやら俺等の運命は変わらないみたいだよ」
「うん、でも---」
それでも見たいんだ。
生きて笑う、彼女の顔を。
最初のコメントを投稿しよう!