#The rotting world

4/11

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
  そしてもう一つ。 この世界に太陽の光は無い。 いや、“無くなった”と言うべきか。 僕が生まれた時には既にそれは失われていて、時計は24時間指針ではなく、48時間に変わっていた。 日夜暗がりの世界で、昼と夜を分かりやすくする為だろう。 空は常に黒く、蒼い空なんて見た事が無い。 光合成が必要な植物にとってここは正に死の世界だった。 死素に感染しなければ枯れて死んでゆく。そして感染を防ぐ為、人間達には伐採されていく。 生きるも死ぬも、本来の形を保つ事はできない。 世界は腐敗し、枯れていく。 そんな中悠長に殺し合いをするんだから平和なモンだ。 僕は既に意味を成さない天窓を見上げた。 男もそれに合わせて暗い空を仰ぐ。 「僕は、今のままだって良いのに。故郷で、ゆっくり、幸せに最期を生きたかったよ」 「世紀末って奴かね。どうやら俺等の運命は変わらないみたいだよ」 「うん、でも---」 それでも見たいんだ。 生きて笑う、彼女の顔を。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加