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さて、乾いた風が村の風車を揺らす。
ああ、なんとも楽しそうに。
僕が村を歩き回って見ると、あちこちに僕等兵士達がたむろしている。
どうも兵士と聞けば悪いイメージに繋がりがちだが、親切に村の人々の手伝いさえする負傷兵も居た。
なかなかどうしてそう簡単に悪へは繋がらないものだ。
僕は違和感が残る腹をさすりながら、微妙な心境で一つの場所に辿り着いた。
---風車の前。
なるほど、建築材料は木材だ。
条件も存在意義も悪いもので作られた風車は、カタカタと音を立てて回り続けている。
察しがつくよう、この世界で木造建築など、棄てられ、死素に呑まれた村でしか見る事はできない。
植物なら枯れようが枯れまいが苗床にしてくれる死素。
それを少しでも敬遠する為、今では全ての建築が石材だ。
僕は今まで何を躊躇していたのだろう。
近くに居た村人にとうとう尋ねた。
「この村は、死素を招き入れるような行為が盛んですね」
と、まあまあ何を言うのやら。
悪態つくような言い方をしてしまった。
しかし目の前の男はそれを気にも止めず気さくに返してくれた。
大人気ない自分だ。
「悪い思いをしたかな」
隠す手段がよく思い浮かばなかった僕は言う。
「まあ、理由が分からない限り、良い気はしませんね」
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