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「わりぃ。今日は裁判所に行くから…今からじゃ引き継ぎもできないし」
「うん。わかってる。何かあったら連絡するから。できるだけ早く帰ってきて」
ヒロは相変わらず苦しそうだった。冴子は2時間おきの授乳とヒロの看病で眠れなかったらしい。それでも彼女はジュンを学校へ送り出し、タケルを幼稚園へ行かせる準備をする。
マスクをし、後ろ髪を引かれる思いで玄関を出た。
俺の仕事は弁護士。今日はクライアントの調停の日だった。
事務所で準備を整え、バッヂをつけ家庭裁判所へと向かう。
『離婚調停』。
当事者同士で離婚がスムーズにいかない場合、第三者を立てて離婚を円滑にすすめる。
クライアントは奥さん。20歳で子供が出来て結婚。しかし働かない旦那に嫌気がさし離婚を決意。子供は6歳。
ヒロと同い年だ。
この夫婦の最大の焦点は『親権放棄』。
…気が重い調停だ。
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