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「私、だまされたんです。二十歳で結婚して…ずっと我慢してきた。家事も仕事も育児も。なのにあの人は働かないし、浮気もするし。もう自由になりたい。今から人生を楽しみたい。新しい彼と一からやり直したいんです」
慰謝料、損害賠償、財産分与はこちらが希望通りに取れる。
しかし彼女は子供はいらないという。
親権保持者が確定しない限り、離婚は成立しないのだ。
この女は『母』より『女』を取った。
この女の元にいても、子供は幸せにならないだろう。
旦那にも女がいる。
この二人は何のために一緒になったのだろう？
子供が出来たから？
その子を捨ててこいつらは何がしたいんだろう？
子供だって馬鹿じゃない。６歳ともなれば必要とされてないことくらいもうわかるんだ。
……不憫でならない。
上着の胸ポケットに入れた携帯が震える。冴子からだ。
「ヒロが入院することになったの。ユースケもいるし…ちょっとお母さんに来てもらおうかと思うんだけど…」
休憩時間に折り返して、告げられる。
「あぁ。そうしてもらえると…助かる」
「…ごめんね。ケイちゃん」
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