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「まぁ…俺らは普通に家から近いしな。学校に行くのには魔法の使用禁止だから遠い奴は大変だろうけど…」
「うん、そうだね」
「…っと!せっかく早く来たんだしちょっと予習もしときたいから…俺、もう行くな!じゃあまたなー!」
「あっ、うん!渉、ちゃんとリラックスしてやるんだよ!僕の用事が終わったら、渉の家行くからね~!またあとでねー!」
智輝は、自分に背を向けて手を振りながら歩いて中に入って行く渉に、自身も手を振りながら多少叫ぶように言いながら見送った。
「…さて、と…僕もそろそろ行こうかな…。今日はやっと念願の“卒業”だし!」
渉の姿が完全に見えなくなれば振っていた手を止め、腕を上に突き出して小さく伸びをし、智輝も歩き出した。
因みに、この学校でいう“卒業”とは…年齢は関係なく、ただ人形師…または魔法師、いずれかの資格がとれれば卒業という形になる。
なので、卒業する人の年齢や季節は様々である。
春に卒業する者もいれば、秋に卒業する者もいる。
暫く歩いていた智輝だが、目的の部屋に着いたらしく、その前で立ち止まり、小さく深呼吸をした後にドアをノックした。
――コンコンッ
「……失礼します。5-3-1(ごーさんいち)の芦原智輝です。入っても宜しいでしょうか?」
「えぇ。どうぞ」
凛とした…声からするに、女性であろう声が響く。
「失礼します」
中からの返事を聞けば、智輝は一言断りを入れてからドアを開け、中に入って行く。
扉の上には、“資格受託室”と書かれているプレートが、埋め込まれていた…――。
「おはようございます」
やはり、部屋の中に居たのは女性だった。
軽くウェーブのかかった水色ショートに、金色の瞳で、顔に細いタイプの黒ぶち眼鏡をかけている綺麗な顔の女性が座っている。
智輝はその女性に向かい、お辞儀をして挨拶をした。
「おはようございます。では…早速ですが、確認のためもう一度名前を言ってもらえますか?番号はもういいので」
女性は、智輝の挨拶に軽く挨拶を返し、智輝を見ながらもう一度名前を言うよう促した。
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