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「あ、はい。芦原智輝です」
「はい、わかりました。それじゃあ少し確認しますから…こちらにかけてお待ちになって下さい」
「あ、じゃあ失礼します」
智輝は女性に席を勧められ、素直に勧められた席に座った。
部屋に少しの沈黙が流れ、女性がパソコンのキーボードを打つ際に聞こえるカチャカチャという音だけが部屋に響く。
暫くすると、キーボードを打っていた女性の手が止まり…部屋に響いていた音が止んだ。
そして女性は顔を上げ、智輝の方を見て話しかける。
「お待たせしました。芦原くん…卒業おめでとうございます。アナタの取得資格は……人形師と魔法師、両方ですね」
「あ…。その…ありがとうございます。あ、はい」
女性の言葉に、少しだけ恥ずかしそうに頬を赤く染め、はにかんで智輝は答えた。
「ふふ…初々しいですね。2つ同時の取得は初めてです。本当にアナタは優秀でしたね」
「い、いや……あの…その…麗藍(れいらん)先生、止めて下さい…」
智輝はシューッと顔から湯気が出そうな程に更に頬を赤く染め、体をちぢこめながら俯き、軽く口ごもる。
女性――麗藍はその智輝の様子を見れば、目を細め微笑ましそうに小さくクスリと笑み、軽く謝って続きを話し出した。
「ふふ…ごめんなさい。もうアナタは卒業ですが…また、いつでも来てくださいね?それではここにサインを…」
「ありがとうございます…。是非、また来させていただきますね。あ、はい…サインですね」
智輝は、ペンを持ち、麗藍に指摘された所にサインをした。
「うふふ…私の癒しですからね。絶対ですよ?でも…その時は、敬語は禁止で…ね?」
「…い、癒しって……。あ、はい!」
智輝は、麗藍の言葉に小さく苦笑し復唱するが、すぐにニッコリと笑って答えた。
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