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智輝がボーッとしながら街を歩いていると…ある路地裏が、ふと視界に入ってきた。
しかし、智輝だって通常ならそんな事は気にしない…のだが、路地裏と共に、視界に入ってきたモノに対して…何故か視線が逸らせなかった。
――…そう。まるで…降り積もりたての雪のように白く、とても綺麗な、“何か”から…。
智輝は、まるで誘われるようにフラフラとその白い“何か”の元へと歩いていった…。
そして、その白い“何か”の前へ着けば足を止め、しゃがんで“それ”を覗き見てみた。
――どうやらそれは、ヒトガタの何かが壁に体を預け、力なくぐったりと座っている形になっているらしい。
ヒトガタとは言っても、この世界では、ヒトガタ=人間ではなく、一般的にヒトガタと外見判断して分類されるのは“人形”と“人間”である。
しかし、どちらも生活に、日常に…道に沢山ありふれているため、どちらかはこの状態でははっきりと判断出来ない。
まだ、目が開いていれば違うのかもしれないが…白いそれの瞳は、硬く閉じている。
しかし、微かな呼吸はしているらしく…胸が上下しているのだけは確認できる。
智輝は、何となく…だが、それを見たことがあるような…懐かしいような気がしていた。
それが余程気になったのか…白い何かに声をかけてみた。
「あ、あの…すみません。大丈夫…ですか?」
「………」
声をかければ、無言で言葉は返ってこなかったが、白い何かは少しだけ肩をピクリと揺らし、ゆっくりと目を開けた。
その瞳は、とても綺麗な…紫色だった。そう…例えるならば宝石のアメジストのような…そんな瞳だった。
そう、それは…幼い日の記憶にある…綺麗な白い、あの……
「あ………に…ん、ぎょう…さん…?」
今まで、忘れていた…。
だが、思い出してみれば…それが“人形には心がある”と信じた、全ての始まりだったような気がする…幼き日の出逢い。
――あぁ…君たちは、再び出逢ってしまったね?…さぁ、物語の始まりだよ?
エンディングは、君たち次第…。
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