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「……?」
白い何か…いや、人形はただ智輝を見上げていた。
言葉を発するでなく、ただただジッと見上げていた。
ここで、何も言わない相手に…もしかしたら、違う人形なのかも…?いや、寧ろ人形ですらなくて人なのかも…!それなら僕、凄く失礼なことを…!という考えが、智輝の脳裏に過った。
「あ、いや…その…こんな所でどうしたんですか?」
「………」
智輝の問いかけに答えようと口を開くも、声が出ないのか…口がパクパクと動くだけで何も言わない。
そして、自身の喉を一度指差してから、口の前に手を持っていき、掌を開く閉じるをして“話す”ジェスチャーをし…その後腕を左右に振ってジェスチャーをした。
そのジェスチャーで、話せないことがわかった。
そして、言葉を理解していると判断した智輝は、とりあえず首を振ることで答えられるような質問をした。
「君は、人形…だよね?」
縦に首を降り、コクリと頷いて肯定の意を示した。
つまり、人形だということだ。
それを見て、智輝は立ち上がってから人形に手を差し出した。
「…ねぇ。よければ僕と一緒に来ない?僕の家に…おいでよ」
人形は、差し出された手を一度見て、顔を一瞬だけ斜め下に向け、戸惑う素振りを見せたものの、智輝の手を取って立ち上がった。
人形が手を取れば、智輝はフワリと柔らかく微笑んだ。
「ありがとう…。家に帰ったら…ちゃんと直してあげるね。それに…君は多分……」
何故かここで言葉を区切り、顎に手をあてて少し考えるような素振りをした。
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