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この出逢いは、偶然か、それとも必然か…。
そう、全てはここから…。
ここから、始まる…――。
赤い、紅い水溜まりが広がる中…白く淡い、それでいて綺麗な“何か”が見える。
その白い何かに…小さな影が近寄ってくる。小さな影…いや、少年は…その白い“何か”に話しかけた。
「…ねぇ…どうしたの…?どこか、いたいの…?きれいな、むらさきのめなのに…なみだでなんだかたいへんなことになってるよ!」
少年が話しかけた白い“何か”は…白くとても美しい……白銀の髪を持つ、女性とも男性とも見分けがつかないほどのとても綺麗な顔の持ち主で、白い着物を着ている人だった。
その白い着物が、白銀の髪を持つ人を…白く、儚く感じさせる。また、呆然と立っているため…更に儚さが際立っている気がする…。
紅い水溜まりの中を、呆然としながら立っていたその白銀の髪の人は、少しだけ反応が遅かったものの、少年に気づいたらしく、少年の方を見た。
「……イタ、イ…?…すみません…少年。私は、人形なので…“感情(それ)”はわかりかねます…」
その白銀の髪の人…いや、人形はそう、淡々とした口調で答えた。
「…ぼく、しょうねんっていうなまえじゃないよ!ぼくは ともき。 ともき っていうんだ!」
白銀の人形の言葉に多少気分を害したらしく、少年… ともき は少し頬を膨らませ言った。
「そう、ですか…。 ともき ですね。すみませんでした」
「ううん。べつにいいよ。よくかんがえたら…きみはぼくのなまえ、しらなかったんだし…しかたないよね。でも、もうおしえたし…つぎはきをつけてね?」
「はい。わかりました。…ともき、ありがとうございます」
一瞬、本当にほんの一瞬で…しかも、微かに…本っ当に微かにだが…白銀の人形が、笑った気がした…。
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