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「…あのさ…きみは、おにいさん?それともおねえさん?」
コテン、と可愛らしく小さく首を傾げて ともき は白銀の人形に問いかけた。
すると、白銀の人形は…先ほどの笑顔はやはり見間違いかと思えるほどに、淡々とした口調で返す。
「…私は人形ですので、性別は特にありませんよ。ただ、造りは男性ですが…」
「う~ん…そっかぁ……。じゃあ、おにいさんでいいよね!あっ、それとも…にんぎょうさん、のほうがいい??」
「どちらでも構いませんよ」
「じゃあ、にんぎょうさん!にんぎょうさん、なまえは?」
「…私の、名前は……」
「おいっ!1番!お前に新しい仕事だ。早く来い!」
白銀の人形が ともき の問いかけに答えようとしたその時、男の声がそれを遮った。
その声を聞けば、白銀の人形は小さくペコリと ともき に頭を下げ…声の方へと歩いて行き、やがて見えなくなってしまった。
去り際に、名前はないんですと言い残して…。
そして、そこには ともき だけとなり… ともき だけが立ち尽くしていた…。
…そう、赤い紅い…血溜まりの中…ただ一人…。何故ここにあるのかも、その紅い物の意味さえも、知ることもなく…ただただ、立ち尽くしていた。
――僕は、血溜まりの中で立ち尽くしていた君の目に…確かに涙を見たんだ。
あの時、あの場所で出逢っていなければ…また、未来は変わっていたのかな?
それでも、あの時君に出逢えたこと…僕は後悔してないよ。何度だって、君に逢いにいくから。
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