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「おーおー…急いでるわねぇ」
智輝のドタバタとした準備の音は、キッチンの方へと行った静菜にも聞こえたらしく…小さくクスクスと笑いながら朝食を作っている。
「…あー…良かった。昨日の内に服とか用意してて…」
服を着替え終わった智輝は、洗面所に向かいながら小さく呟く。
と、言っても…その“昨日の内の用意”も静菜に言われてやったものなのだが……。
「………よし!サッパリした」
顔を洗い、簡単に髪を整える。あまり寝癖のつかない髪質らしく、簡単に整えただけで髪は纏まった。
鏡を見て軽く確認すればリビングへ向かう。
リビングには、焼きたてのパン…ウィンナー、ブロッコリー、と…美味しそうな朝食が机に並べられていた。
「おばさ…」
「……ト・モ?」
智輝が“おばさん”、そう言おうとしたら…静菜はニッコリと…しかし、逆らえないような威圧感を醸し出しながら笑み、智輝の名を呼んだ。
因みに、何故智輝が静菜のことを“おばさん”と呼ぼうとしたかというと…つまりそのまま、静菜は智輝の伯母にあたるのだ。
母の妹であり、幼い時に両親を亡くした智輝をここまで育ててくれた人でもある。
そして、“おばさん”と呼ばれるのを物凄く嫌っている。
「…あ~……いや、あの…静菜さんデス。えっと…起こしてくれてありがとう」
「ん!別にいいわよ。あと少しで出来るから、机の上の先に食べちゃってていいわよ?」
「わかった!いただきます」
智輝は手を合わせて“いただきます”と挨拶をし、机の上のご飯を食べ始めた。
「ん!美味しいよ♪」
「そう、良かったわ。はい、静菜さん特製オムレツ」
「あひがほう!」
「もうっ…!口に物入れて喋んないのっ!行儀悪いでしょ!」
朝食のこの光景は、叱るその姿は…まごうことなき“親子”に見える。
…いや、見た目で言えば“姉弟”…だが。
とにかく、二人とも、血の繋がり…いや、実際の家族関係に関係なく、互いの事を実の姉のように…実の弟のように大切にしている。
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