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さて、これで学校について…人形師と魔法師について…理解出来た事と思うので、本編の方に戻ろう。
智輝は、学校に向けてゆっくりと歩いていると…後ろから、声を掛けられた。
「トモ!はよっ!」
明るい感じで、力強い声だ。
多分…声からするに、声を掛けたのは男だろう。
しかし、智輝には声を聞いただけで誰だかわかったのか、相手の名前を呼びながら振り返る。
「あ、渉(わたる)…おはよう。今日は何だか早いね。珍しくない?何かあったの?」
振り返った先には、揉み上げだけが長い、うなじが見える程度の黒髪に、若干茶色っぽい黒目の青年が居た。
その青年は、頬をポリポリと掻きながら軽く苦笑いを浮かべて口を開く。
「あ~…いや…実は俺、今日…試験日なんだよ…。しかも、“査定日”。だから流石に遅れちゃいけねぇと思ってな」
黒髪の青年――渉は、少しスピードを上げて智輝の横に来て、そのまま智輝の横を歩きながらそう言った。
「…あ、そうなんだ。確か渉はあと移動系だけだったよね」
「あぁ。でも俺、移動系あんま得意じゃねぇんだよな…。…ヤッベ、ガラにもなく緊張してきた」
そう言った渉の顔は、目に見えて強ばっていた。
そんな渉を見た智輝は…声をいつもより明るくして話しかけた。
「大丈夫大丈夫!リラックスしなよ。緊張せずにやれたら渉なら絶対いけるからさ!幼なじみの僕が言うんだから間違いなしだよ!ねっ?」
「…フッ…。あぁ、そうだな。そうだよな!緊張せずにちゃんとやれれば大丈夫だよな!…よしっ!トモ、サンキューな!」
渉は智輝の励ましに小さくクスッと笑んだ後に、グッと拳を作り話し出し、言い終わる頃には完全に緊張は解けたようで、強ばっていた顔はほぐれていた。
「どういたしまして!」
智輝はニコリと笑って返した。
そうこう言いながら歩いている内に…二人の目の前には白く、豪邸のような外見の、大きな建物が見えてきた。
「…あ…もう着いたね、学校」
そう。ここが学校である。
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