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「ねぇルナ。今夜は人間界から見る星が綺麗なんですって」
「そうなの?偵察に行った時に見て帰ろうかな」
「いいなぁ。私なんて今日に限って書類担当だもん」
ルナ・メロウ。
下級三隊第八位、大天使。
親友のフィー・ルミナスとの会話でスタートする私の日常。
いつもの風景。
「星、見た感想教えてよね」
さらりと揺れる、肩につくぐらいの色素の薄い黄緑色の髪と同じ色の瞳を、それでも楽しげに揺らす親友に苦笑して、私は周りを見回してあることに気が付いた。
いつも私たちの側には必ずある、私より濃い空色の髪と深緑の優しい瞳を携えた彼がいない。
「ウィズはどうしたの?」
「ウィズならもう今日の仕事に行ったよ。もー私だけ書類担当なんだもん」
星見たかったなー、と愚痴を零した親友とは別に、もう人間界へ降りたらしいもう一人の親友。
ウィズ・ホーネスト。
お喋り好きな私やフィーとは違って真面目で、それでも優しいウィズはフィーの想い人。
「じゃあ私もそろそろ人間界に降りようかな」
ふわりと自分の空色の髪が揺れるのを視界の端で捉えて私はフィーに手を振った。
今日も元気に手を振って、とびきりの笑顔をくれるフィーが私は大好き。
そんな私の仕事は人間界で、心配と不安を残して漂っている綺麗な魂を偵察、発見、そして正しい場所に導くこと。
毎日のように続くその仕事を今日もこなすため、私は躊躇うことなく天使界の真ん中に位置する、人間界へと通じている泉にその身体を投じた。
ぽちゃん。
優しく身体を温かい何かが包んで、閉じていた瞳を開くともうそこは人間界。
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