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天使の私がクライムを好きなのはおかしいこと?
クライムが好きなだけで私は天使から裏切り者として見られるの?
いつだって上の天使たちは悪魔だけを悪だと言うけど
排除命令?
天使だって争うことを繰り返す人間たちと同じじゃない。
「天使側につきたいか?」
考え事をしていた私の耳に不意に届いたクライムの声に、私は迷うことなく首を横に振った。
「違うの…」
「何が違うんだ。お前、自分の顔鏡で見てみろよ」
きっと泣きそうな、酷い顔をしてるんだろうな。
私をじっと見つめるクライムの顔を見ることが出来ずに視線と一緒に顔を俯かせた。
後ろめたいわけじゃない。
ただ
「今更天使側に戻りたいっつっても俺はお前を手放すつもりはねぇぜ?」
うん。
わかってる。
私だって始めからあなたの側を離れる、なんて選択肢はなかったの。
「あの場所で私は迷わずあなたを選べなかった」
弱い自分が
「クライムの方が大事なんだって頭の中では何度も叫ぶのに」
たまらなく
「私はどちらも捨てられなかったの」
嫌になった
「へぇ…まぁ俺にはそんなことどうだっていいんだ」
近付いて来るクライムの気配を感じて私は俯いたまま瞳を伏せた。
今クライムはどんな顔をしているんだろう。
「顔あげろよ」
すぐ近くに感じるクライムの気配からは彼の心情は何一つ読み取れない。
それから数秒も待つことなく顎を掴まれて強制的に上を向かされた私の瞳にクライムの姿が映った。
無表情な彼の瞳の中にも私の姿が見える。
酷く弱々しく眉を下げる自分。
顎を掴んでいた彼の爪が肌に食い込んで、生温い何かが喉を伝ったような気がした。
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