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―――二日目―――
「…で、どこに行きたいんだ」
「え?」
翌朝、私より遅くに起きたクライムが私を見て言った第一声がそれだった。
あまりに予想外で、意味を飲み込めていない私の口からは酷く間抜けな声が漏れる。
そんな私をベッドに寝転んだまま見つめるクライムは至極不機嫌そうに眉を寄せた。
「…自分で言ったことも忘れたのか」
「え…と……あっ…!」
記憶の糸を少しだけ手繰り寄せれば容易に思い起こせる昨日の言葉。
そう言えば昨日どこかに連れて行ってって私が頼んだんだっけ。
でも…
「どこか…連れて行ってくれるの?」
まさか本当に連れて行ってくれるものだとは思っていなかった私の頭は少しだけ戸惑っているみたい。
どこか不安な気持ちを抱えながらもクライムにそう聞けば、彼は呆れたように溜め息を吐いた。
怒っているようなそれじゃなく、クライムの表情はどこか穏やかで。
何だか前よりクライムが優しい気がするのは私の気のせい?
それともたまたまそんな気分だっただけ?
「何だ、行かねぇならそれはそれでいいんだぜ?」
からかうように吊り上げられた口を見て私は勢いよく首を左右に振って、それを見たクライムも小さく笑みを零したような気がした。
ドキドキと高鳴る胸は出会った頃と変わらず彼にときめいてその鼓動を速くする。
やっぱり私、この人が好き
「まぁこの前みたいなあんな目立つとこには行けねぇけど」
今の私にはそれだけで十分だよ。
「嬉しい」
そんな意味も込めた言葉と一緒に自然と綻んだ私の顔を見たクライムは、また一つ呆れたように溜め息を吐いていた。
さぁ、今日は一緒にどこへ行こうかしら。
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