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「本当にこんなところでいいのかよ」
その言葉は彼に背中を向けていた私に不意にかかって来た。
そんな彼の言葉に振り返りもせずに私は並べられた商品をじっくりと見つめる。
キラキラ
キラキラ
輝くそれらは酷く綺麗で
「羨ましいな」
それを大好きな人に送ってもらえる人間の女性を酷く羨ましく思った。
「本当、お前変わってるよ」
はぁ、と零された溜め息に苦笑して私は店内を見渡す。
今日は何か人間にとってイベントか何かやってるのかしら。
いつも外からは少なく見えていた店内はいつもより少し人が多いように感じる。
その中に一組だけ、私の欲しいそれを恋人らしい男性にはめてもらっている女性の姿が目に止まった。
嬉しそうに頬を染めて、何よりキラキラ輝く笑顔を見せる女性はこの中の何より綺麗。
「そんなに欲しいのかよ、そんなオモチャみたいな小せぇのが」
「だって好きな人に貰いたいじゃない」
「そんなもの欲しがるなんて人間とお前くらいなもんだ」
愛を誓うために送るなんてすごくロマンチックじゃない。
私たち天使や悪魔には一生縁のないものだけど、私もクライムに送られてみたいな、なんて。
「そんなにいいもんなのかよ。その指輪ってやつは」
「好きな人に送られるから意味があるんだよ」
私は天使
あなたは悪魔
そんなこと関係ないと思っているのに
誰もこの恋を認めてはくれない
だけどね、もし、もしも
この指輪をあなたから私に送られることがあるなら
そうしたらこの恋が誰かに認められるような気がして
「私、人間になりたい」
そうしたらこんな悩みなんてきっとなくなるのに。
ふと零れた言葉に彼からの返事は返って来ることはなかった。
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