はめつへの足音

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「もういいだろ」 「…うん」 飽きもせずに見続けたジュエルショップを後に、私は大人しく彼の後ろを着いて飛ぶ。 最後に見えた幸せそうな女性の顔が頭から離れない。 何度だってクライムと想い合う現実を夢見る私は余程彼に溺れてるみたい。 「ねぇ、どこ行くの?」 「帰るんだよ。もうお前の行きたいところとやらは行ったし、もういいだろ?」 やっぱり甘くて幸せな日々だなんて夢のまた夢かも。 一緒にいられるだけで幸せ。 だけどね、どこか物足りない。 そう想うことさえ、許されなかったのかもしれない。 「クライムは…私のこと…嫌い?」 嫌いだと前言われたこと、忘れたわけじゃないの。 ほんの少しの期待を込めてそう呟いた言葉はきっと震えてた。 私より少しだけ前を飛ぶあなたは振り返らない。 だから表情も感情も読み取れることはない。 「いきなり何なんだ」 彼の飛ぶスピードは相変わらず私よりずっと速くて、彼の背中を必死に追うように私もついて行く。 彼の声は変わらずぶっきらぼう。 「少しでもクライムに好きって想われていたいな……天使だから、とかじゃなくて正直な気持ちを聞きたいの」 その答えが例え【嫌い】でも きっと私は【好き】を抑えられないんだろうね。 少しの沈黙の後、急に彼が止まるものだから、私は勢いがついたまま彼の背中にぶつかった。 「わ、…っ!どうしたの?」 勢いよくぶつかった鼻を押さえて私はゆっくりと振り返るクライムの顔を見上げる。 綺麗なルビーレッドの瞳に私の姿が映っているのが見えた。 「嫌いだったらわざわざ俺の目の届く範囲に置いたりしねぇよ」 時が止まった気がした。
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