はめつへの足音

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―――三日目――― その日は朝から雨だった。 最近になって全然朝から出掛けることのなくなったクライムと、とくに何か会話するわけでもなく時間は過ぎて行く。 何度も乱暴されてついていた痣ももうだいぶ目立たなくなっていた。 こんな時だけは人間たちよりずっと早い治癒力に感謝するの。 「ルナ」 何だろう。 そう言おうとしたけれど、声が出なかった。 座っていたはずの彼がすぐ後ろまで来ていた事実より 「ク…ライム?」 彼に後ろから抱きしめられている事実に、一瞬頭が真っ白になった。 「ど、どうしたの?」 昨日から何だかおかしい。 まるで私の夢が現実になったみたい。 「いや…何でもねぇよ」 結局クライムは何も教えてくれることなくすぐに離れたけれど、その表情はやっぱりいつもと違った。 何が違うのか、なんてわからないけど 「そう…ならいいの」 だけどどこか思い詰めているような気がして、それ以上深く詮索することなんて出来なかった。 ザーザーと振る雨の音を辿るように空を見上げるクライムにかける言葉が見つからない。 「クライム…」 小さく名前を呼んでみたけれど、窓を打つ雨の音に邪魔されて私の声が彼に届くことはなかった。 「ちょっと出て来るわ」 どこに? なんて言わなくてもわかってるくせに目で訴えかけてみる。 「…お前は着いて来るなよ」 細められた瞳に、何だか少しだけ泣きそうになった。 「また…行くの?」 壁をすり抜けて外へ飛び立った彼にはきっと聞こえてはいないんだろう。 「嫌だよ…」 独占欲 彼は私のものなんかじゃない。 こんな感情、今まで持ったことだってないのに。 嫌だなんて思うこと自体、おこがましいでしょう? 「クライム…っ」 ねぇ 私は天使失格ですか?
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