恋の甘さが届く夜に(A)

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「アリエッタ?」 細い腕が僕の腰に回され、後ろから抱き締められ、僕は歩みを止めた。 「ありがとう……お花」 そう。 僕はダアトの街に出て、花屋で花買ってきた。 その花を、ケーキのドーム型のフタの下に忍ばせておいた。 僕を抱き締める小さな手には、アリエッタの髪と同じピンク色の花が一輪。 クリスマスなら赤い花かポインセチアかと思ったけど、この花がいちばんアリエッタに似合うと思ったんだ。 「ケーキ、もう全部食べちゃったの?」 「いや……別の皿に移して、まだ半分くらいある……けど」 会話よりこの状態が気になってしょうがない。 暖かくて柔らかい感触に包まれていて、平常心を保つなんて無理だ。
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