幼い日の記憶

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お出かけと言っても、民宿の近くにある大きな公園を散歩するだけである。 それでも初めて行く場所は楽しいもの。 「いきますよ~!」 先生の言葉で出発。 智尋に手を引かれた未來も、楽しそうに笑顔を見せた。 「智尋君。大きな公園って、お花咲いてるかな?」 「さぁな?着いてからのお楽しみって事で!」 大人の足なら5分で到着する場所も、子供の足では倍以上かかり、ちょっとした冒険である。 アリを見つけては、踏んでみようとしたり、葉っぱを見つければ、触ってみたり、引き抜いたり。 そんな楽しい散歩コースを歩いていると、チューリップ畑を見つけた。 「智尋君!チューリップだよ♪綺麗だね~。ルンルルン~♪ルンルン♪」 陽気に歌を口ずさんでいる未來は、智尋の手をギュッと握りしめていた。 「未來ちゃんの歌は下手くそ~っ!」 「えぇ?下手じゃないよ~!」 智尋の肩を軽く叩いて、頬を膨らませて怒る未來。 気になる女の子をいじめるのは、男なら誰にでも経験のある事で、智尋も例外ではない。 そんな風に智尋と一緒に見たチューリップ畑は、中学になった今でも鮮明に覚えている。
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