名前

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「だけど、お前や美佐は違う・・・ちゃんと松岡純矢という一人の人間として見ている気がしたんだ」 そりゃそうだろう。初めから松岡は僕にとって、ライバルだった。いつの間にかそんな思いも、接しているうちに、こいつなら友人になれそうだと思っていたけど。 「あのさ、僕も小さい時から周りから変に注目されてたから、そんな目が嫌で素の自分って他人には見せなかったんだ」 なんでもそつなく器用に出来てしまい、真面目過ぎる性格が災いしてるのか、委員長なんかもやらされる機会が多くて、正直うんざりしてた。 でも、去年柏木さんと出会い、沢木や松岡と過ごす様になって・・・この3人になら、"本当の自分"を出せる様な気がしたのだ。 「でも、柏木さんや沢木や松岡の前では本当の自分でいられる気がしてたんだ」 僕が思っていた事を伝えると、松岡の表情が少しやわらかくなる。 「そっか・・・あのな、提案なんだけど」 そう言った松岡はまたどんな風に言ったら良いのか少し考える素振りをする。 「松岡?」 僕が声を掛けると、 「お互い、名前で呼ばないか?」 松岡の意外な言葉に・・・僕は絶句した。
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