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12月25日。とある公園のベンチ。しんしんと降る雪。聞こえてくる笑い声。
「うぅ…さみ…」
「ほんとだね」
厚着をしていても、気付けば体が震え出す。身震いしながら言葉を漏らすと、隣に座る女子も、同じように寒そうな仕草を見せ、相槌を打ってくれた。
「今年は賑やかなクリスマスだったね、健吾君」
ついさっきまでの記憶を蘇らせた彼女は、笑いながらそう言った。
「ほんと、賑やか過ぎるくらいだよ」
現に、俺の目の前では友達が雪合戦したり、雪だるまを作ったりしている。疲れの残った体で、よくあんなことができるな、と素直に思ってしまう。
でも…
「楽しいクリスマスだったかな」
俺は前を見ながら、笑顔でそう続けた。
寒いのは確かだけど、あったかい気持ちになってる。
来年も、この先もずっとこんな気分でいたい、そんな風に思う。
とすっ…
ほっこりした気分でいると、急に右肩が重くなった。
少し驚きながら目を向けると、葵さんがもたれかかっている。
「ぁ、葵さん…?…」
動揺しながら言葉を投げかける。だけど、返事は返ってこない。耳をすますと、小さく寝息が聞こえてきた。
疲れてたんだな…。
あれだけのことがあれば、疲れもする。
俺は笑みを浮かべながら、今年のクリスマスを振り返った…。
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