12月某日

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「え?…ドリカン?…何それ?」  今年の賑やか過ぎるクリスマス、その事の始まりは巧の一言だった…。 「ドリームカントリーだよ!睦月市に新しくできるだろ?」 「あぁ…あの総合レジャー施設…だっけ?」  確か12月20日くらいにオープン予定の、大規模なレジャー施設。ニュースで軽く見たくらいだったけど、確か運動施設、遊園地、水族館とかが併設されてるはず。 「分かってんじゃねぇか」 「でも、それがどうかしたの?」  朝練を終えて、練習着から制服へと着替えながら、会話は続いていく。 「こんなチラシをもらったんだよ」  そう言って巧は、一枚の紙を俺に手渡した。 「なになに?…来たれ高校球児、クリスマスに最高の笑顔を見せるのは君だ。オフシーズンに思いっきり体を動かそう…?」  とりあえず一文を読み上げてみたけど、なんとも安っぽい印象を受ける。 「野球に通じる種目を、チームで競わせる大会みたいだぜ。場所はドリカンにできるドーム球場だとよ」 「え!?あそこってドーム球場もできるの!?」 「みたいだぜ」 「プロの球団がいるわけでもないのに。ま、コンサートくらいには使えるか…」  肩をすくめながらチラシを眺める俺に、巧は話が逸れたと、語気を強めている。 「んな事はどうだっていんだよ!参加しようぜ!」 「そんな事だろうと思ったよ。ちなみに、チームは何人?……って、5~10人?…ずいぶんアバウトだな」  5人が成り立つ時点で、試合はやらないってことだ。あくまで野球をモチーフとしたイベントらしい。 「12月24日と25日だけどよ、参加するだろ?…な?…な!?」 「分かったよ、参加するから。他のみんなにも、後で声かけよう」 「おぉ、話が分かるねぇ、健吾。ちなみに優勝したら新品の野球用品だぜ!」 「それはちょっと惹かれるかも」  優勝したときの商品は置いとくとして、今の時点ではどんな大会なのか、全くイメージができない。そうは言っても、気楽に参加できそうだし、体を動かすのには大いに賛成だ。きっとメンバーは簡単に集まると思う。 「何より…クリスマスに予定がないしね」 「さらりと悲しいこと言うんじゃねぇよ、健吾。ほら、教室行こうぜ」 「はは、そうだね」  改めて2人でチラシに目を通しながら、朝の教室へ向かった…。
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