12月某日

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「え?…イベントガール?」  世間ではもうすぐ冬休み。誰もがそれぞれの予定に向けて、着々と準備を始めている。  ちなみに、私は未だ何の予定も入っていない。  そんな私の所へ香奈がちょっと変わった話題を持ちかけてきたのが、今年の賑やかなクリスマスの始まり。 「そう。葵以外にも声かけようと思ってんだけどね」  登校してきてすぐの出来事に、事情がまだのみ込めない私は、少し焦りながら香奈に質問を投げかける。 「ぁ、あの…香奈、それはどういった内容の話で?」 「今度新しくできるじゃない、ドリカンが!…そこで開かれるイベントを盛り上げる役目みたいよ」  みたいよ…って。  なんでこんな話をきらきらと目を輝かせながらできるのかしら、この子は。 「盛り上げるって、具体的にはどんな風に?」 「チアガール的な?」 「無理!何言ってんの!?」  今まで散々香奈には振り回されてきた。でも、どれも許容範囲は超えてなかった。  けど、これは違う…これは完全にオーバーしてる。常識的にも。 「大丈夫よ、軽く歌って踊れれば」 「それが無理なんじゃない!普通の高校生なの、私達は!」 「え~…だって、受かればクリスマスとイブの2日間はドリカン入り放題、乗り物乗り放題よ。イベントって言ったって、拘束されるのは数時間程度だし」 「あのね、私はそんなことを言ってる訳じゃないんだってば。常識的に考えれば分かるじゃない。気まぐれで参加するレベルの話じゃないって」  私の冷静な言葉も聞き入れようとはせず、香奈はぶすっとした表情を見せている。 「だって、どうせ過ごすなら楽しく過ごしたいじゃない、クリスマス」 「別な予定を入れればいいじゃない。瑞原君とか誘ったら?」 「葵こそ、桐崎君は?」  お互いに質問し合って、結局下を向く。同じタイミングではぁ、と小さくため息。  ちょっとずつ賑やかになっていく教室。重くなってしまった口を香奈がゆっくりと開いた。 「せっかくあかねっちとかゆりちーとかと仲良くなったんだし、一緒に過ごすチャンスかな…って、思ったの」  ちょっとしおらしい言葉に、私は少しドキッとする。 「そりゃあ…ちょっとやり過ぎな話だとは思ったけど…でも、挑戦するぐらい…」 「香奈…」  目の前には俯いたままの友人の姿。少しかわいそうになってきた。
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